はじめに
本記事は、筆者が整備士・検査業務に携わる中で実際に見てきた一般的な判断基準や現場の考え方をもとにまとめたものです。
車検の合否は車両の状態や検査環境によって異なる場合があり、すべてのケースに当てはまるものではありません。
「ユーザー車検では通ったのに、整備工場ではダメと言われた」
「検査員によって判断が違う気がする」
こうした声をよく耳にしますが、車検は決して感覚や気分で行われているものではありません。
一見グレーに見える判断の裏側には、明確な責任と基準があります。
この記事では、現場で実際に判断されている考え方を、できるだけ正確に解説します。
① 検査員はなぜリスクを取れないのか
まず前提として知っておいてほしいのは、検査員は「みなし公務員」という立場で業務を行っているという点です。
簡単に言えば、
- 権限を持つ代わりに
- 判断の結果に対して重い責任を負う
という立場です。
指定整備工場では、
- 持ち込み検査で「通らなかった車」を通す
- 本来NGな状態を見逃す
こうした行為が発覚すれば、営業停止や指定取消につながります。
そのため現場では、「通してあげたい」「今回は大丈夫そう」
といった情や忖度での判断は一切できません。
車検で見られているのは、
この車が、車検後の2年間を安全に走行できる状態か
この一点です。
② 錆の線引きが「人によって違う」ように見える理由
車体の錆については、講習などでも「最終的には検査員が状態を総合的に判断する項目になる」と説明されることがあります。
これだけ聞くと、「人によってバラつきがある」と感じるかもしれません。
しかし実際は、見るポイントは共通です。
判断基準は主に以下の点です。
- 構造部材かどうか
- 強度に影響しているか
- 穴あき・貫通があるか
- 今後進行する可能性が高いか
表面の軽い錆であっても、
- フレーム
- クロスメンバー
- サスペンション取付部
などに及んでいれば、アウトになる可能性は高いです。
逆に、見た目が派手でも
- 強度に影響しない箇所
- 進行が止まっている状態
であれば、通るケースもあります。
「人によって違う」のではなく、判断材料が多く、説明責任が求められる項目だからそう見える、というのが実情です。
③ LEDランプの一部不灯で判断が割れる理由
近年増えているのが、ストップランプやテールランプのLEDランプの一部不灯です。
白熱球と違い、LEDは
- 全体は点灯している
- その中の1粒だけが点灯していない
という状態が発生します。
しかし結論から言うと、LEDの一部不灯は原則として不適合です。
ストップランプは、後続車に制動を知らせる重要な保安部品であり、
一部でも不灯があれば
- 視認性の低下
- 故障の進行
- 今後の不点灯リスク
を否定できません。
指定整備工場や検査業務の現場では、「1粒切れている=不適合」という判断をするケースがほとんどです。
それでも「判断が割れるように見える」のは、
- ユーザー車検で指摘されなかった
- 検査ラインや検査環境の違い
といった外的要因によるもので、現場の判断基準そのものが変わるわけではありません。
現場の判断は感覚ではなく、保安基準で定められた検査項目に適合しているか、数値や状態が基準の範囲内に収まっているかを前提に行われます。
その上で、車検後の2年間を安全に使用できる状態かという視点で判断されています。
④ ヘッドライトの曇りが「数値」で決まる理由
ヘッドライトの曇りについても、「見た目が曇っている=アウト」ではありません。
車検では、光度計による数値測定が行われます。
判断されるのは、
- 規定光度を満たしているか
- 配光に問題がないか
です。
見た目が多少曇っていても、数値をクリアしていれば通ります。
逆に、見た目がそこまで酷くなくても、
- 光量不足
- 配光不良
があれば、不合格になります。
ここが「検査員の感覚で決めている」と誤解されやすいポイントですが、実際は数値で線引きされている項目です。
実際の車検では「基準を満たしていても」指摘されることがある
実際の車検では、これらの基準を満たしていても
点検時に不具合が見つかるケースや、ユーザー車検で不合格になるケースもあります。
▶︎24ヶ月点検で実際に多い不具合ランキング
▶︎ ユーザー車検で不合格になる原因と再検査ルール
結論|車検とは「2年間安全に乗れるか」を説明する試験
車検は、抜け道や裏技を探すための制度ではありません。
検査員・整備工場が見ているのは、
この車が、車検後の2年間を安全に走行できる状態か
という一点です。
一見グレーに見える判断も、その裏には
- 責任
- 基準
- 説明義務
があります。
もし車検で指摘を受けた場合は、「なぜダメなのか」を確認してみてください。
理由を聞けば、多くの場合は安全性に基づいた説明が返ってくるはずです。
車検で指摘を受けないためには、事前点検でどこを見ておくべきかを知っておくことが重要です。
点検の考え方と、実際によくある不具合については以下の記事で解説しています。
※本記事は、指定整備工場での実務経験をもとに執筆しています。
また、実際にユーザー車検で不合格になるケースについては、見落としやすいポイントと全体的な失敗例を以下の記事で解説しています。

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