冬は、車にとって最も過酷な季節。気温が下がり、雪が降り、道路が凍結することで、車の弱い部分が一気に表面化します。
特に雪国では、冬前の点検をしていなかったことで、出勤できない・家族を乗せて危険な目に遭う・レッカーを呼ぶ羽目になる…そんなトラブルが非常に多いです。
僕自身、整備士として雪国で働きながら、多くの冬トラブルを見てきました。
そして自分自身も「点検しておけばよかった」と感じた経験がいくつもあります。
この記事では、雪国整備士としての視点と実体験を踏まえて、冬前に絶対に準備しておきたい車の点検項目 をまとめました。
特に家族を乗せて走るパパさんは必見です。
冬前の車点検チェックリスト(一覧)
- ワイパー(ゴム切れ・スノーブレード)
- ウォッシャー液(凍結防止)
- バッテリー(5年以上は交換推奨)
- タイヤ(溝・空気圧・年数)
- 脱出板・スノーブラシ・スコップ
- ブースターケーブル
- 牽引フックの場所と任意保険のレッカーサービスの確認
これらの項目を事前に確認しておけば、雪が降ってきても安心して運転できます。
ここから詳しく解説します。
① 【視界】ワイパーは“スノーブレード必須”
夏ワイパーでは吹雪の中を走れません
雪国で冬を迎えるなら、ワイパーは最優先点検項目です。
夏用ワイパーは形状的に雪が溜まりやすく、吹雪の日はまったく機能しません。
僕も以前、夏ワイパーのまま吹雪の中を走ったことがありますが、
- 雪がワイパーに固まる
- まったく視界が見えない
- コンビニに頻繁に寄って雪を手で落とさないと走れない
という状態で、恐怖すら感じました。
冬前にやるべきこと
- ゴムの切れ・硬化チェック
- スノーブレードへ交換(強く推奨)
- リアワイパーも忘れず確認
視界不良は事故の原因になるので、最優先で準備してほしいポイントです。
② 【視界】ウォッシャー液は冬用に
冬はガラスが想像以上に汚れます。
融雪剤、巻き上げられた水、雪で視界がどんどん悪くなるため、ウォッシャー液は必須です。
私も今でこそ気を付けていますが、以前こんなことがありました。
【実体験】水を入れたら凍って噴射できなかった
「ウォッシャー液が減ったから…」と軽い気持ちで水を入れたら、翌朝−気温で見事に凍結。
スイッチを押してもまったく出ず、かなり焦りました。
冬は 必ず凍らない“冬用ウォッシャー液” を使ってください。
冬前にやるべきこと
冬にウォッシャー液の補充をする時は、凍結防止タイプのウォッシャー液を使用してください。
- −30℃以上対応の凍結防止タイプへ交換
- 量をしっかり確認して満タンに
視界確保のため、ワイパーと合わせて必ず整えておきましょう。
③ 【始動トラブル防止】バッテリーは5年以上なら交換を
冬の朝、もっとも多いトラブルが エンジンがかからない問題です。冬場の勤務時間始後、電話がかかってくると大体これです。
気温が下がるとバッテリー性能は大きく低下します。また、バッテリーは夏のエアコンなどでも酷使されます。
使用年数が長く、弱っているバッテリーほど気温低下で突然死する確率が高いです。個人的な目安として、5年以上使用しているのお客様には交換をお勧めしています。
整備士目線でも、冬前だけは特にシビアにチェックすべきです。
バッテリーの交換目安
- 5年以上使用 → 交換推奨
- バッテリーメーカー推奨 → 2年
- エンジンの始動(セルのかかり)が弱いと感じたら
2年は早いと感じるかもしれませんが、冬の始動トラブルは本当に多く、レッカーを呼ぶケースも少なくありません。
うちの会社では、いつも車検や定期点検入庫時にはバッテリーテスターで点検しています。
ちなみに今までの経験上、2年や3年使用しているバッテリーをテスターでチェックしても、「劣化、交換要」とはまだ出たことがありません。
冬前にやるべきこと
- 使用年数の確認
- 電圧測定・テスター診断
- 電圧測定・テスター診断
仕事前にエンジンがかからないのは本当に大変です。バッテリーを何年使っているのか把握していない、わからないという場合はディーラーや整備工場でお願いすればテスターで確認してもらえます。
バッテリーチェックだけで頼みにくい場合は、タイヤ交換やオイル交換のついでにお願いしてみましょう。
④ 【走行性能】タイヤの溝・空気圧・年数
スタッドレスタイヤは溝だけでなく ゴムの柔らかさ(経年劣化) が性能を大きく左右します。
実際に私も溝が残っていたのにスリップした経験があります。
詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

冬前のチェック項目
- 溝が 5mm 未満 → 買い替え検討リスト
- 製造年数 5年以上 → ゴム硬化の可能性
- 製造年数 5年以上 → ゴム硬化の可能性
- ナットのトルク締め確認
夏よりも空気圧が下がりやすく、燃費悪化や滑りの原因にもなるため要注意です。
よく自分でタイヤ交換をしてそのまま走行されている方がいますが、必ず空気圧、トルクの締め確認はすべきです。ガソリンスタンドや整備工場などで無料で点検できます。
低い空気圧で走っているとタイヤの摩耗を早めてしまいます。またトルク管理を怠ると、重大な事故につながります。
⑤ 【体験談】スタック対策と雪道の備え
私自身、冬に何度もスタックを経験済みです。
整備士でもスタックすると、当たり前のようにめちゃくちゃ焦ります。そしてなんとなく、いつも時間に余裕のないときに限ってスタックしている気がします。
その体験から「冬は時間の余裕と備えがすべて…」と痛感しました。
【体験談①】大型車を避けて歩道側に寄ったら、そのままスタック
雪道で対向の大型車をよけるために少し歩道側へ寄って停車したら、そのままタイヤが雪の中に沈み込み無事にスタック。前進後退を繰り返す、ハンドルを切るなどしてもびくともしません。
その時は近くの親切な方にも手伝ってもらいながら、なんとか抜け出すことができました。ちなみに脱出まで約1時間以上かかったと記憶しています…。
【体験談②】出勤前にスタックし、不要なバスタオルとスコップで脱出
朝の出勤前、「行ってきます」と家を出た瞬間にスタック。
その時は家にあった“いらないバスタオル”とスコップを使い、空転したタイヤの下をスコップで掘り、そこにバスタオルを噛ませてなんとか脱出しました。
この経験から、冬の車には最低でも以下を積んでおくようになりました。
車に積んでおきたいもの
- 脱出板(軽量タイプでOK)
- スノーブラシ
- 小さめのスコップ
- 冬用手袋
- 古いタオル(超使えます!)
スノーブラシは特に必須です。脱出板は、雪道や駐車場から出られないときに非常に役立ちます。
⑥ いざという時に助かる|ブースターケーブルと携帯ジャンプスターター
冬はバッテリー上がりが非常に多く、ブースターケーブルがあると安心です。
自分だけではなく、バッテリー上がりで困っている人を助けてあげられるかもしれないので、お守り代わりに積んでおきましょう。最近は小型のバッテリー式のジャンプスターターもあり、車に積んでも場所を取りません。
注意点
簡単にですが、ブースターケーブルやジャンプスターターをつなぐときの注意点をまとめました。
- 赤(+)→黒(−)の順で接続
- 車同士を近づけすぎない
- ハイブリッド車は対応不可のものがある
使い方は事前に一度確認しておきましょう。
繋ぎ方が分からない場合は車の取扱説明書にも「バッテリーあがりのときは?」という項目があるので確認してください。
⑦ 【トラブル対応】牽引フックの場所とレッカーサービスの確認
雪道でスタックしたとき、救援が来ても牽引フックの場所が分からないという人はとても多いです。
車種によって場所も形状も違うので、冬前に一度確認しておきましょう。
任意保険のレッカーサービスは要チェック
意外と自分の加入している任意保険のサービス内容を把握していない方は多いです。
任意保険の証書には、
- レッカー何kmまで無料?
- 雪道脱出は対象?
- バッテリー上がりは無料?
- レンタカー費用は含まれる?
といった記載があります。
私たち整備工場にもお客様から緊急の対応依頼は多いです。
しかし、どうしても作業できる幅や対応時間帯などレッカーサービスの方が優れています。とくに冬はレッカー依頼が急増するため、内容を理解しておくと安心です。
もちろんJAFもおすすめ
JAFは雪道やスタックにも強く、会員ならではの対応範囲が広いのも魅力です。
年会費は掛かりますが、保険のロードサービスと併用すると最強です。
【チェックリスト】冬前の車点検まとめ|最低限これだけは確認
冬のトラブルは、ほとんどが 事前の点検で防げるもの です。
チェックリストまとめ
- 視界(ワイパー・ウォッシャー液)
- 始動(バッテリー)
- 走行(タイヤ)
- 備え(脱出板・スコップ・ケーブル)
- 救援(レッカーサービスの確認)
これらを整えておくことで、あなた自身だけでなく家族の安全も守ることができます。
冬場は「まだ大丈夫だろう」という油断が、一番危険な時期です。
この記事をチェックリストとして、今日から準備を始めてみてください。
迷ったら、この3つだけは最優先で確認してください。
雪国で10年以上整備士をしてきた経験から、冬のトラブルで特に多いのはこの3つです。
- ワイパー
- バッテリー
- タイヤ
全部を一気に整えるのは大変という方でも、この3つだけは最優先でしてください。
また、これらの点検や軽整備をDIYで行う場合、最低限の工具を揃えておくと作業がスムーズで安全です。
実際に私が「冬前点検用に最低限これだけあれば困らない」と感じた工具セットはこちらでまとめています。


コメント