車のメンテナンスの中でもっとも基本的で大切なのが「エンジンオイル交換」。
しかし、「まだ走れるから大丈夫」「オイルランプがついてからでいい」と考えてしまう人も少なくありません。
実際は、半年または5,000kmを目安に定期的に交換することで、エンジンの寿命は確実に伸びます。
この記事では、現役整備士の筆者が、エンジンオイルの役割・交換時期・放置したときの実例を交えながら、わかりやすく解説します。
①エンジンオイルの役割とは?
エンジンオイルは、車の心臓部であるエンジンを守る“血液”のような存在です。
主な役割は次の5つです。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 潤滑 | 金属同士の摩擦を減らす |
| 冷却 | 摩擦熱を吸収し温度を下げる |
| 清浄 | 汚れやススを包み込み、エンジン内をきれいに保つ |
| 密封 | ピストンとシリンダーの隙間を埋め、圧縮を保つ |
| 防錆 | 内部の金属をサビや腐食から守る |
このどれか1つでも機能しなくなると、エンジンの寿命は一気に縮みます。
つまり、オイル交換を怠る=エンジンの健康を削る行為とも言えます。
②交換時期の目安
一般的な目安は以下の通りです。
| 使用条件 | 交換距離 | 交換時期 |
|---|---|---|
| 通常走行(一般道中心) | 5,000km〜7,000km | 6か月ごと |
| シビアコンディション(短距離・渋滞多・高回転走行など) | 3,000km〜5,000km | 3〜6か月ごと |
「半年または5,000km」を基本ラインとして覚えておくのがベストです。
特に街乗りメインで、エンジンが温まりきらないまま止まることが多い人は、シビアコンディション扱いと考えたほうが安全です。
③オイルフィルター(エレメント)も忘れずに!
オイルフィルター(エレメント)は、オイル中の汚れをろ過するパーツ。
これを交換しないままだと、せっかく新しいオイルを入れてもすぐ汚れてしまうことになります。
フィルターの交換目安は、
オイル交換2回につき1回(約1万kmごと) が基本です。
④交換を怠るとどうなる?放置したエンジンの実例
エンジンオイルの交換を後回しにしていると、内部では想像以上に深刻なダメージが進行しています。
ここでは、実際に整備現場で見てきた「放置によるトラブル例」を3つ紹介します。
実例1:オイル交換の前にオイルが消費し、オイルランプ点灯
走行距離が増えると、エンジン内部でオイルが徐々に消費されていきます。
交換時期を過ぎてもそのまま走行を続けると、オイル量が減少しオイル警告ランプ(赤いオイルジョッキのマーク)が点灯します。
この時点で気づかず走り続けると、潤滑が追いつかず、金属同士が直接擦れてエンジン内部に焼き付きの初期症状(カラカラ音など)が出始めます。
オイル量チェックを怠っていた結果、軽症で済むはずのものが高額修理につながることも少なくありません。
実例2:3万kmオイル無交換で焼き付き、エンジン載せ替え
以前、筆者が担当したお客様の中には「気づいたら3万km以上オイルを替えていなかった」というケースもありました。
結果、エンジン内部のオイルはドロドロに固着し、粘土のようなスラッジ状態に。
オイルポンプが詰まり、油圧が上がらなくなり、最終的にはエンジンが完全に焼き付きました。
修理費は中古エンジン載せ替え+工賃で20万円以上。
定期的なオイル交換(1回3000円程度)をしていれば防げた典型的なケースです。
実例3:燃費悪化と異音の発生
オイル交換を長期間サボると、潤滑性能が落ち、エンジン内部の抵抗が増えます。
すると燃費が悪化し、発進時や加速時に「カリカリ」「ゴロゴロ」といった異音が出ることもあります。
この段階ではまだ走れる状態でも、内部の摩耗は確実に進行中。
そのまま乗り続けると、やがてタペット音やノッキング音が強くなり、最悪の場合は先述のように焼き付きへと発展します。
まとめ
- オイルは時間とともに酸化・劣化して性能を失う。
- 警告ランプ点灯=危険信号。走行は厳禁。
- 「音」「燃費」「振動」の変化は放置のサイン。
定期交換は面倒に思えても、長期的に見ればエンジン寿命と財布を守る最大のメンテナンスです。
⑤まとめ:半年に一度のオイル交換が「車を長持ちさせる最安の保険」
エンジンオイルは、「交換しすぎて損する」ことはほぼありません。
むしろ、早めの交換こそが最もコスパの良い整備です。
とくに中古車や軽自動車は、オイル容量が少なく劣化が早いため注意が必要です。
定期的なオイル交換は、エンジンを守る最もシンプルで確実なメンテナンス。
「半年または5,000km」を意識するだけで、車の寿命と信頼性はぐっと伸びます。
整備士からのひとこと
「エンジンオイルを替える人は、車を大切にする人」。
オイル交換の記録を残しておくことも、次の車検や売却時にプラス評価につながりやすいです。
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